クエの鳴く夜は恐ろしい

爆笑問題カーボーイ向けに投稿したショートショートショートを公開します

DV

「ウチの夫のDVが酷くて」
 長年の友人である玲子からの電話に、政恵は顔をしかめた。
「DVってどういうこと? いつからなの」
「結婚してからすぐ。もう10年になるわ」
「まあお気の毒に」
「普段は優しくて仕事熱心なんだけど、夜になるとDVが始まるの。もう耐えられない」
 電話口の向こうからすすり泣く声が聞こえた。
「弁護士さんに相談したら」
「一度家に来て貰って相談したんだけど、家族内で解決してくださいって言われたの」
「そんな無責任な弁護士さんもいるのね」
 政恵は憤りを感じずにはいられなかった。
「とにかくこれ以上DVが増えるのは耐えられない。頼れるのは政恵だけよ。夫がいないうちにウチの様子だけでも見てくれないかしら」
「勿論よ。今すぐでも行くわ」
 すぐさま政恵は玲子の家を訪問した。家は小綺麗にされており、DVがあった様子は感じられない。
「見て、これがDVの証拠よ」
 玲子は棚を指さした。棚には大量のDVDが置かれていた。