クエの鳴く夜は恐ろしい

爆笑問題カーボーイ向けに投稿したショートショートショートを公開します

再会

 孝夫はある日、一本の電話を受け取った。相手は、片思いだった同級生の昌子だった。久しぶりの電話に話が弾み、二人は会うことになった。昌子は中学の頃の面影はなく、すっかり大人の女性になっていた。
「孝夫君、そんなことあったの覚えてないでしょ」
「全然覚えてなかったよ。そっかーオレ陸上部でエースだったのか。バレー部だと思ってたよ」
「うふふ、違うわよ。陸上部」
 孝夫がすっかり忘れていた事を次々と話し出す昌子。
「実は孝夫君のこと、あの頃から好きだったの」
「あの頃からって……」
 孝夫は動揺した。少しの沈黙のあと、昌子はうつむいた。
「ううん、でも今、私は借金抱えてるから、孝夫君にふさわしい女性にはなれないわ」
「そんなこと言うなよ。オレに出来ることなら何でもするよ。そして一緒になろう」
「ホント? 嬉しいわ」
 孝夫が振り込め詐欺の被害届を出したのは、それから三ヶ月後の事だった。