クエの鳴く夜は恐ろしい

爆笑問題カーボーイ向けに投稿したショートショートショートを公開します

他薦

 高校生の早紀は自宅に帰ると、自分の机の上に何やら置かれていることに気付いた。見ると、経歴書には妹の麻衣の顔写真、封筒、切手が置かれている。
 きっと妹がアルバイトの応募でもしようとしていたのだろうと思い、早紀の机にしまった。
 しばらくすると麻衣が学校から帰ってきた。
「あれ、お姉ちゃん。経歴書とか見なかった? どこかに送っちゃった?」
「それなら麻衣の机の中に閉まったわよ。なんで送るのよ」
「ゴメ~ン。でも助かった~。お姉ちゃんにどこかに経歴書を送られるかと思っちゃった」
 次の日、早紀は自宅に戻ると、昨日閉まったはずの経歴書がまた机の上に置かれていた。今度は経歴書に麻衣の顔写真が貼られており、封筒には宛先が書かれ、切手まで貼られている。またかと思いながらも早紀は麻衣の机の中にしまった。
 しばらくすると、麻衣が帰ってきた。
「お姉ちゃん。経歴書見なかった? 封してポストに入れちゃった?」
「入れるわけないでしょ。もういい加減人の机散らかさないでくれる?」
「ゴメ~ン。麻衣うっかり者だから」
 その次の日、また早紀の机の上に麻衣の経歴書が置かれていた。経歴書を見ると麻衣の個人的なプロフィールがびっしり書き込まれていた。
「何これ? アルバイトかと思ったら芸能事務所に送る経歴書じゃない」
 そう思いながら机を見渡すと、一枚の紙切れが置かれていた。読むと「この経歴書を送った者には幸運が訪れます」と書かれている。
 しばらくすると、麻衣が帰ってきた。
「あれ、お姉ちゃん。経歴書とか見なかった?」
「見たしそこにもう閉まった。あとね、何度経歴書置いても送るつもりないから。もう止めてよねこういうの」
 麻衣は呆然とした表情で聞いていた。
「ウソでしょ? なんでかわいい妹に対してこんな仕打ち出来るの」
「うっさいわ。そんなの自分で送ればいいでしょ」
「経歴書をお姉ちゃんが勝手に送ったってならないと格好悪いでしょ~。分かるでしょそれくらい」
「知らないってのそんなの。勝手に送れ!」
 麻衣は早紀に懇願した。
「お願いですから~送ってちょうだい~。お姉様お願いします~」