メレンゲの気持ち
麻衣はお菓子を作るのが好きだった。この日もケーキを作っていたのだが、朝早起きしたせいか眠くなってしまい、作っている最中にソファで少しの間眠ってしまった。
目が覚めると、テーブルの上に見慣れないボウルがあった。ボウルの中にはメレンゲが作られており、脇には一枚の紙が置かれ、こう書かれていた。
「このメレンゲを使ってください メレンゲの妖精より」
読んだ麻衣はブルッと震えた。
「うわぁ、パパだこれ。寒いわぁ」
そう思った麻衣は、ボウルにあったメレンゲを捨てた。
しばらくすると、孝夫が麻衣の所にやってきた。
「麻衣、ここにあったメレンゲはどうした」
「あれやったのパパでしょ。そういうのやめてくれる?」
「知らないぞ。さっき置き手紙があったから読んだだけだ。で、メレンゲは?」
「捨てたわよ」
孝夫は唖然とした。
「捨て、ちゃったの?」
「そう」
「なんて事するんだ!」
「パパには関係ないでしょ。だってこれメレンゲの妖精が作ったんだからね」
「そうじゃない! 麻衣が喜ぶと思って夜こっそりお菓子教室に通い、一生懸命メレンゲを作った気持ち、分かるのか!」
「えっ」
「お前、メレンゲの気持ち考えたことあるのか!」