小悪魔
通学途中でいつも見かける美少女を好きになってしまった。
むさくるしい男子校に通う僕にとって、黒い髪をなびかせて自転車に乗るその姿は、まるで天使のような存在だった。
日に日に思いは強くなり、彼女を見かけるようになって三ヶ月、ついに僕は駅の駐輪場にいる彼女に声を掛けた。
この日のために僕は手紙を手に持っていた。
「すみません。いつもこちらで通学されていますよね」
「そうだけど、何?」
初めて彼女の声を聞いた。思っていたよりも大人びた印象だった。
「うまく言葉にできる自信がないので、手紙を書いてきました。これ、受け取ってください」
「あら、ラブレターなんて随分古風なことするのね。でもそういうの、悪くない」
彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「僕は孝夫って言いいます。あなたのお名前を教えてくれませんか」
「フッ、私があなたにそんなこと伝える必要ある?」
僕は彼女に完全に翻弄されていた。通学路で見つけた天使は、今は小悪魔のような存在に見えた。
「すみません。それではせめて年齢だけでも教えてくれませんか」
緊張が走る。彼女は少しの間をおいて答えた。
「10万16歳」
「悪魔じゃねえか」